2011年4月14日木曜日

BUTTERFLY

ITALY
LUCCA
LUNCH TIME

ついた瞬間、このレストランはいけるかも知れないと思った
田舎にたたずむ一軒の石造りの家
全く派手ではない看板
広いがよく手入れされた庭
ここを目指して来なければ絶対にそれとわからないレストラン
経験上、こういうレストランに外れはない

もちろん適当にきた訳ではない
宿の近くにある星つきのレストラン
ミシュランガイドを片手に多くのレストランで食事をしてきたが、やはり星ありとそうでないところには大きな壁がある
例え「フォークの数」(ミシュランガイドでのレーティング手法。ひらたくいうと店の格式をフォークの数で表す)が少なくても星つきが、星なしのレベルを下回ることはまずない

そして3つ星と1つ星には明らかな差がある
目に見えて違うのはスタッフの数や動き、接し方のタイミングや、気配り、食器、リネンの質、そしてワインリスト
それだけではないが、やはり3つ星は圧倒的になにかがちがう
しかし私は1つ星がすきだ
特に更なる上昇を目指してオーナーやシェフ、スタッフが一丸となっている店は3つ星にはない熱意を感じるからだ

席についてほどなくすると、突然日本人が声をかけてきた
なんと日本からイタリアの料理学校を経てここで修行しているのだという
手と腕は火傷や切り傷のあとがたくさん見受けられる
物腰柔らかな若者で、ここでの注文方法やおすすめ料理を丁寧に解説してくれた

はじめての1つ星レストランに入った場合、私は大抵コースを選ぶ
店の自慢の料理や季節のものがほとんど入っているからだ
今回もそれにならい、私は肉主体のコース、奥さまは魚主体のコースを選択
ただし魚コースのなかにある店のスペシャルティ(ロブスターとトマトのミルフィーユ、バジルのゼリーのせ)を肉コースのなかに取り込んでもらい、奥さまもパスタを、この店の名物鳩肉ラグーのフォアグラのせ(アラカルトメニュー)に交換して注文
こうしたややこしい注文も問題なく受け入れてくれるのもこうしたレストランの良いところ

ワインも熟慮のあとソムリエに相談して決定
イタリアワインに詳しくない私でもわかるワインがリーズナブルな価格でオンリストされている
非常に好感がもてる
ワインについてはワインブログにて詳述

最初の皿が出てきて、そのレベルの高さがわかった
チーズの上にズッキーニの花を揚げたものがのり、ベースにはバジルのソース
見た目から芸術品であることがわかる

二皿目はピエモンテはファッソーナ牛のタルタル
下味がついているため当然肉の臭みは一切ない
タルタルソースとの絶妙な組み合わせが実にいい
口に爽やかさを与えるシャキっとした大根の組み合わせはもしかして日本の若武者の発想かもしれない

三皿目のスペシャルティは私の一番のお気に入り
熟したトマト、かすかに甘味のあるロブスター、そしてバジルのゼリー、そしておそらく生クリームをベースとしたソースというそれぞれ個性のあるものを一度に楽しむ贅沢な一品

四皿目はリゾット
表面は普通のリゾットだが、実は三層に別れている
米の層、挽き肉の層、そして肉を主体としたソースの層
混ぜないで食べてくださいと言われた理由がわかった
これを混ぜると層のあるケーキをかき混ぜて食べるのと同じだ
一口づつ皿のそこにスプーンが当たるようにして三層を一口で食べていく
すばらしい
表面にうまく垂らしてある極上のオリーブオイルが味にアクセントを添える

五皿目は茄子と挽き肉のラビオリ
これもディスプレイがすばらしい
軽く焦げ目がついた表面と適度に熱い挽き肉と茄子が絶妙のコンビネーションになっている
奥さまの鳩肉もさすがの一品



くせのある鳩肉と、ちがう意味でくせのあるフォアグラが両者のくせを打ち消しあって、さらに昇華された複雑味と深みを引き出すことに成功している

六皿目はメインのビーフ
注文通りミディアムで出されている
英国では至難の技であるが、イタリアでは当たり前(簡単なことのようにに思えるが、それだけでも感動してしまう)
肉は柔らかく、ジューシー
やはり旨味を閉じ込めるという発想は、日本を含め食の国と言われるところではスタンダード

七皿目からはデザート
最初のデザートはティラミス(に思える)ものだった
リキュールの少し聞いたクリームにチョコレートがまぶしてあり、底にはイチゴのソースが敷いてある
初夏を思わせる一品
八皿目はメインのデザート
スレートの皿に乗るのは、イタリアのクリームブリュレ、コーヒーのムース、そしてチョコレートの焼き菓子
このチョコレートの焼き菓子をスプーンで割ると中から溶けたチョコレートが顔をだす
これだけならよくあるお菓子だが、中の液体がヘーゼルナッツのリキュールとチョコレートを混ぜた(であろう)ものなのである
チョコレートにチョコレートであれば、若干しつこくなるこのお菓子も、この一捻りでずっと食べやすく、あきの来ないものにかわる
この驚きが、レストラン探求の楽しみつながるのだと思う

素晴らしい料理の数々
このレストランは遠からず2つ星になるのではないか
少なくとも料理の質は十分にその資格があると思う

若武者いわくやはり日本人の客は少ないという
非常に残念なことであると思う

確かに観光都市ピサとフィレンツェの中間地点であり見過ごしがちではある
しかし土産物屋だらけで団体客が列をなしている両都市よりも、ずっと美しく静かで、中世の面影を色濃く残した城塞都市Luccaを擁するこの地方を見ないのは、本当にもったいない

最後にダブルエスプレッソを注文してお会計を済ませ、日差しが若干柔らかくなってきた頃にレストランを後にした

素晴らしいレストラン
また必ず訪れよう

施設: 5
食事: 5
ワイン: 5

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